ロードバイクの値段がインフレを続ける中、圧倒的なコスパを理由に人気上昇中のELVES。
新作のELVES Falath EVOを実際に購入し、私のメインバイクであるS-Works Tarmac SL7と乗り比べた感想を書いてみることにする。
結論を述べれば、ELVES Falath EVOはそのエアロな見た目に反したバイクであり、おそらく購入者全員が満足するバイクではない。だが、決して安かろう悪かろうの使えないバイクでもない。
この記事が購入を考えている方の何かしらのヒントになれば嬉しい。
ELVES Falath EVOとは
Falath EVO は、UCI 準拠のエアロロードバイクフレームである。いわゆる中華メーカーであるELVESの最新作エアロフレームである。
中華メーカーと言ってもISO 4210-6:2023 規格と EN 14766 の安全要件を満たしており、アリ〇エクスプレスでよく見られる訳の分からないカーボンフレームとは一線を画すると言っていい。
しかも、ヘッドチューブやボトムブラケットなどの重要な部分に、東レ社のUD高剛性カーボンT1000を使用している。
フレーム重量は未塗装の最小サイズで1005g、フォークが415gであり、軽量とは言えないまでもエアロフレームであることを考えれば許容範囲である。
昨今のトレンドが軽量バイクとエアロダイナミクスの融合であるのに対して、Falath EVOはフラットで広いダウンチューブ、よりエアロダイナミックなリアシートステーの設計となっており、いかにもな見た目のエアロ形状である。
しかし、一番の見た目の特徴は、別売りであるElves OROME AeroEvo ハンドルバーと組み合わせるとトップチューブとハンドルまでが段差のないフラットな形状になることだ。
バイクの前面に位置し、空力的に高い効果のあるハンドル周りの段差を無くせるのは魅力的である。
見た目だけでいうとサーヴェロS5を彷彿させる見た目である。この見た目にやられる人は多そうである。何を隠そう私もその一人だ(笑)
それでいてフレーム価格は155100円、ハンドル価格は31020円と(2023年9月時点)
関税を考慮しても20万円で購入できる。
またカスタムペイントも無料というのだから驚きだ。
私も今回このサービスを利用した。
スペック、価格に注目すると他に競合がないと言っていいほど、ELVES Falath EVOは魅力的なバイクである。購入後もその気持ちは変わらない。
参考 ELVES公式ホームページ
https://jp.elvesbike.com/
なぜ購入に至ったのか
私のメインバイクはTarmac SL7だ。この事実はELVES Falath EVOを購入した後も変わらないし、多分SL8を購入したとしても変わらない。
Tarmac SL7はケイデンス90以上で巡行すると平坦だろうが登りだろうが、推進力が段違いでスーッと加速していく。この高ケイデンスでの加速は他のフレームでは感じられない唯一無二の長所だと思っている。挙動も分かりやすい。
ケイデンスが高めな私とは相性が良く、壊れない限りずっと乗っていきたい自分史上最高のバイクと考えている。
しかし、私はJBCFレースとJICFレースに出場しているので、どうしても『落車』のリスクが高い。
しかも、雨風が多少強くてもこれらのレースは開催される。
ターマックSL7のみで戦うのは金銭的リスクが高すぎる(フレームだけで66万!)と思いながらレースを走っていた。
そこで、悪天候や落車のリスクが高いクリテリウムなどの平坦メインのレースで使えるフレームを探し出したというのが、購入の始まりである。
そんな時にELVES Falath EVOは発表された。
当初はスペシャライズドのAllez Sprint(アレー・スプリント)を考えていた私だが、平坦がメインならエアロロードもありかなと感じた。
形状も面白く、何より価格が安い。最悪落車してフレームが割れたとしても何とか耐えられる値段だ。(多分、号泣するとは思うが。)
こんな感じで割とポンポンと購入の決意が固まったのである。
注文から完成車になるまで
1.ジオメトリ問題
購入を決意した私がまずぶち当たった悩みは
Falath EVOジオメトリ変じゃね?
下の表を見て頂きたいのだが、一般的といっていいTarmac SL7と比べて
異常にスタックが高く、リーチが短いということだ。
上がFalath EVO、下がTarmac SL7のジオメトリだ。
リーチはBBから引いた垂線からヘッドチューブ上端までの距離を示し、スタックはBBから引いた水平線からヘッドチューブまでを測った距離になる。
ライダー目線で言うと、スタックはハンドルの高さ、リーチはハンドルまでの距離と言い換えられる。
スタックが高いFalath EVOはサドルとのハンドル落差が出しにくい。リーチが短いということはハンドルまでの距離も近くなるということだ。
つまり、ポジションは必然的にアップライトな姿勢となる。
Falath EVOは大きなハンドル落差を取ることを可能にし、非常に低く、エアロダイナミックなライドポジションを取ることを実現します。by公式サイト
とか言いながら、実際のジオメトリはゆったり乗るために設計されたエンデュランスバイクのそれなのである(笑)
正直、この段階で購入を辞めようか迷った。Allez Sprint(アレー・スプリント)であればsl7のポジションをそのまま踏襲できる。
ただ、アルミフレームはどうしても重量がネックになる。平坦使用がメインになるとはいえロードレースでの使用も考えていたので出来れば軽量さも欲しい。やはりFalath EVOは捨てがたかった。
私は身長が169㎝でsl7では52サイズを選択している。トップチューブ長だけで選択すればFalath EVOはLサイズとなるのだが、上記の通りハンドル落差が付けられない。
そこで、フレームはワンサイズ小さくしたMサイズを選択し、ステム長を110㎜と長めにすることでリーチの短さをカバーする結論に至った。
そして、この選択は正しかった。ポジションはほぼsl7と同じで違和感なく乗れている。
購入を考えている方はFalath EVOはジオメトリーにかなり癖があることは知っておいて頂きたい。
ポジションが出せるかをよく検討したほうがいいだろう。迷ったら、ワンサイズ小さいサイズを選択することをおススメする。
2.カラーで迷う
レースシーズン中にFalath EVOを購入した私は納期が早いからという理由で、当初は既存のカラーを選択した。しかし、その後思い直し、カラーオーダーをするという暴挙に至った。
そうにも関わらず、かなりきちんとした対応をELVESBIKEJAPANさんにして頂くことが出来た。
以下にやり取りを記しておきたい。
ELVESBIKEJAPANです
この度はお買い上げ誠にありがとうございます
領収書発行の前に簡易な注文確認を致します、下記でお間違いないでしょうか?
Falath EVO One Piece Handlebar OROME AeroEVO
OROME AeroEvo
Size:380/110
ELVES FALATH EVO Carbon Road Disc framesets, UCI Approved
Elves Falath EVO
カラー::カメレオン(ブラウンライケングリーン)ホワイト
※カスタムペイント(無料)が必要な場合は、別途案内が必要となりますので申し出ください
納期は最短1.5ヶ月~となります
ご回答お待ちしております。
よろしくお願いいたします。
ELVEBIKEJAPAN
購入後このような案内メールがあり、カスタムペイントは不要と伝え、注文完了となった。
しかし、心変わりがあり、数週間後に以下のメールを送った。
カラー::カメレオン(ブラウンライケングリーン)ホワイト
こちらの商品の納品待ちなのですが、注文カラーをSNS等で挙がっている現物の写真で確認したところ、自分のイメージと違ったため
フレームカラーの変更をお願いしたいです。
①オーダーカラーが出来るのであれば、添付写真の通りにお願いしたいです。フレームがマットブラック、ロゴがホワイトになるかと思います。
②オーダーカラーが不可なら、既存カラーのシルバーグリーングレーカメレオンに変更をお願いします。
サイズは同じでお願いします。
納期が伸びても構いません。
わがままなお願いで大変恐縮ですが、ご対応の程、よろしくお願いいたします。
これへの返答として
お問い合わせありがとうございます
カラー変更打診しました
お客様のフレームは塗装最中です
その為新たに調達しないといけないので
数か月待つ必要があります。
既存カラーのシルバーグリーングレーカメレオンでしたら
同サイズがあれば早くお出しできるかもしれません。
このように私の無茶ぶりを快諾+他の代替案も提示してくれた。
ELVEBIKEJAPANさんには頭が上がらない。
新興メーカーだからと不安になる必要はない。少なくとも私はきめ細かい対応をしてくれる印象を持った。
こうしたやり取りを経て、注文してから2か月ほどで無事にフレームは着弾した。
3.バイクの組み立てどこにお願いしよう?
さて、無事にフレームは届いた。残る問題は誰に組み上げてもらうかだ。
ちなみに自分で組むという選択はなかった。油圧ホースがハンドルに内装されるし、油圧ディスク車をいじるのは不器用な私には厳しい。
とりあえず普段お世話になっているスペシャライズド京都店に電話してみると、意外にもOKしてくれた。SL7を購入したこともあり、普段から顔の見える関係を築いていて良かった。
天下のスペシャライズドに新興メーカーの組み立てをお願いするのはどうかと思ったが杞憂だったようだ。ちなみに組み立て費用は4万弱であった。
使用コンポはアルテグラ8070。11速di2だ。
12速も考えたが、中古でいい値段になっていたので11速にした。性能に全く不満はないし、個人的にはコンポにどれだけ傷が入っていても気にならないので中古で十分だ。
こうして組み上がったバイクがこちらだ。
4.My Falath EVO
- フレーム:Falath EVO M
- ハンドル:OROME AeroEvo 380/110
- ホイール:oneaer DX-5
- コンポ:アルテグラ8070
- サドル:TNI LiteFly CARBON SADDLE
スペックは大体こんな感じだ。工賃とホイール含めて総額50万ちょっとだろうか。
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ビッグメーカーの2/3程度の値段で済んでいる。レースで十分戦えるスペックでこの値段は優秀だ。
次章から走行感について述べていこうと思う。
Falath EVO インプレ
まず、使用感を述べる前提として私のスペックは体重が60~62㎏、FTPはシーズン中で280w前後
スプリントでの最高出力が1070w程度だ。
どちらかというと登りが得意で、インターバル耐性はあまりないが、脚質はパンチャー寄りだと思う。(実際に登りが勝負所のロードレースが一番マシな順位になる。)
そんな私のFalath EVOの数か月の使用感が以下の通りになる。
長所
まず良かった点だが、奇抜な見た目に反して、ハンドリングは素直である。
sl7もバイクを進む、止まる、曲がるといったバイクの基本操作が非常にしやすいバイクだが、Falath EVOも挙動が分かりやすい。下りも安心してスピードを出すことが出来る。
ややハンドルが左右に切れやすく、直進安定性が劣るかなと感じつつも慣れの範囲だ。sl7と比較してもダンシングも左右に振りにくいといった印象はない。下ハンドルを握ったスプリントも問題ない。
結論としてあまり独自に主張してこないフレームであり、総じて扱いやすいという印象を受けた。
そして、肝心のエアロ性能だが、平坦路はsl7と比較して、特に速いとも遅いともならなかった。しかし、5%を超えるような峠の下りではスピードがぐんぐん伸びていく感覚があり、実際に下りのストラバセグメントでは、何もしていないがタイムを更新している。
私はCANYONエアロードなどの生粋のエアロロードに乗ったことがないので、エアロロード同士の比較としてFalath EVOのエアロ性能が優秀かは分からない。
しかし、少なくともsl7との比較では、同等もしくは上という印象を受けた。
もう一つ、パワーを300w以上かけて加速していく場面において、Falath EVOのBB周りはしなる印象が強い。よく言えば足当たりがマイルドで、アタック1発あたりの疲労がsl7よりもわずかだが少ない印象を受けた。
逆にsl7は300w程度ではしなる感覚はない。sl7が扱いにくいという方も多いのはここに原因があると感じている。ケイデンスを低めに踏み込んでしなりを利用するペダリングの人とは相性が悪いのだろう。
Falath EVOはBB周りがしなりバネのような形で跳ね返るので、ケイデンスが低めな人にも適したバイクだと思う。
逆にケイデンスが高めの回すペダリングの人にとっては、sl7は力が逃げずに推進力に変わるBB周りなんだろうと素人なりに解釈している。
このBB周りの違いから、Falath EVOは高出力時の疲労が少ない反面、鋭い加速は苦手なようで、sl7との一番の違いはここだなという印象を受けた。
短所
ここからはいまいちな部分を挙げていく。
前述の通り、Falath EVOは平坦巡行は気持ちよくできるが、加速が非常にもっさりしている。
クリテリウムレースで使用したが、コーナーが多く加減速を強いられる場面では、バイクを再度トップスピードに乗せるのに時間がかかり、正直使用したくないなと感じた。アタックの疲労が少なかろうが、肝心の加速が弱いとレースではちぎられるし、ここぞという場面で自信を持って仕掛けられない。
ただし、この印象は踏み込むペダリングが得意な人、もっと大きなパワーを出せる人であれば変わるかもしれないことを付け加えておく。
加減速が生じるという点で、勾配が変化するような登りも苦手だ。逆にほとんど勾配が変化しない登りであれば普通に淡々と進ませることは出来る。特別重ったるい感じはしない。
ただダンシングからシッティングに戻るような瞬間にもっと反応のいいバイクに乗りたいという気にはなってしまう。
総じて積極的に登りでこのバイクを使うメリットはないと感じる。
私の中では登りはソリッドな加速が出来るsl7に完全に軍配が上がる。登りを中心に考えている方は他のフレームを選んだほうが幸せになれると思う。
また、構造的に不満があったのが、ヘッドチューブが独特の構造をしているのが関係しているのか、ヘッドがガタつきやすくハンドルで振動を拾いやすいということだ。1か月に1回はプレッシャーアンカーを締め直したほうがいいだろう。
まとめ ~どんな使用用途がおススメか~
全体的な感触としては10万円台のフレームとしては十分な性能を有している。
ハイエンドバイクと比べると加減速がもっさりしているが、巡行性能は高く扱いやすい。
ただ、はっきりsl7との性能差はあると感じた。これは言葉で表すと難しいのだが、sl7に乗っている時に感じる『いいバイクに乗っている』という感覚が弱いのだ。
漕ぎ出す際に脚に感じるsl7の澄んだ心地よい反発感がなく、ぬーんと力を受け止め、ぬーんと加速するFalath EVO。
sl7にはあるペダリングの軽さがFalath EVOには感じられなかった。乗っていて気持ちのいいバイクはやはりsl7である。
しかし、冷静に考えて、フレームの価格差は約5倍である。コスパを考えるとFalath EVOが魅力的なバイクであることは変わらない。
結論として、私がこのフレームをおすすめするのは
これらの方であれば、性能も十分なコスパ最強のバイクとして満足感が高いと思う。
巡行性能が高く、レースで使用しなくても一定ペースで走る分には非常に感触がいい。
ゆえにトライアスロンや長距離のツーリングにも向いていると感じる。
レースに頻繁に出る方で1台で何でもこなしたいという方は、もう少し加減速に強いオールラウンドなバイクを選んだほうが登りや走り出しが楽になるとは思う。
用途を絞った使い方や私のようにセカンドバイク的な立ち位置で使うのはおススメだ。
いやはや最近の中華クオリティはすごい。
色々書いてきたが、あくまで素人の感想である。ただ、宣伝などを度外視した生の声として受け取って頂ければ幸いである。
そして、レース会場でこの漆黒のFalath EVOさんを見かけたら気軽に声をかけて欲しい。
それではまた。
カーボンホイールならICAN【icanjp.com】
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