もっと速く走りたい。
そんな純粋な気持ちで自転車競技のトレーニングに取り組んでいる方も多いのではないでしょうか。
身体的能力の向上は時間がかかります。途中で燃え尽きてしまっては目標に到達することはできません。
トレーニングは長期戦であることを肝に銘じましょう。
1週間追い込んでも、1か月間さぼってしまっては意味がありません。トレーニングは長期投資のようなものです。じっくり焦らず取り組みましょう。
今回はロードバイクに5年乗っている私が大事にしている心構えをまとめてみました。
月並みですが、思考が変われば行動は変わります。
この記事を読んで、トレーニングの本質に触れると同時に、長期的なモチベーションの維持に役立てて頂ければとても嬉しいです。
1.トレーニングの原則を忘れるな
トレーニング方法や頻度について悩んだことはありますか?
多くのサイクリストが試行錯誤しながら日々、自分の身体と向き合いトレーニングを行っていると思います。
限られた時間の中で、効果的なトレーニングを行うためにも、『個別性』『漸進性』『過負荷』『特異性』これら4つのトレーニングに関する原則を知っておきましょう。
個別性の原則
負荷への対応能力は人によって異なります。
仲間と同じ内容の トレーニングをしていても、レースまでに同じレベルの体力に達するかどうかはわかりません。
この違いは遺伝的要素によるものが大きいとされ、それによってどの程度の速さで負荷に反応するかが決まります。
つまり、人と同じことをしても、同じ結果が得られるとは限らないということです。
一般的なトレーニングメニューは参考にしつつ、最終的には試行錯誤しながら自分に合ったトレーニングにチューニングしていきましょう。
通常、 トレーニングではっきりした成果を出すには 4~ 8週間は必要です。
じっくり取り組みましょう。
私の場合は、まだ自分の競技者特性をつかみ切れていないのもありますが、偏った負荷をかけないことを第一にトレーニングに励むようにしています。
漸進性の原則
負荷は徐々に上げていく必要があります。
いきなり高強度の練習をしても故障の原因となり数日間トレーニングが出来ないほどの疲労となり、長期的な目線でみるとトレーニング効率が落ちます。 下手すれば逆効果にすらなります。
どの程度負荷を増やしていくかは、特に強度面で、個人差がかなりありますが、通常、負荷は (特に強度については)、サイクルごとに 5~ 15%程度高めていくイメージを持ってください。
一定の期間ごとに図で示した一つ上のゾーン(2→3→4→5→6)を中心に刺激していく形で大丈夫です。
私は夏季休暇にまとまった時間があったため、調子に乗って毎日長時間の乗り込みをしたことによって熱中症になり1か月間ほどパフォーマンスが上がりませんでした。
これは短時間で練習量を急激に増やしたことが原因でまさに漸進性の原則に反した練習ですね。反省しています。
過負荷の原則
トレーニングの目的は、レースでかかる負荷にうまく対処できるように、体を適切に変えていくことです。
そのためには、現在の体カレベルに刺激が加わるような負荷をかけなくてはなりません。適切に負荷をかけると疲労が生じ、そこから回復すると体力は以前より向上します。
これは「超回復理論」 として知られています。
最適なトレーニングとは、繰り返し適切な負荷を体に与えることです。
若干きついと感じる程度の適度の負荷を与えることで、適応後の体力は着実に向上します。
そして、忘れてはいけないのは体力はトレーニング中にではなく、その後の休養の間に向上するということです。休養をおろそかにしていると、体力は向上するどころか低下します。
身体に負荷を与えて『結果的に』能力を向上させることがトレーニングであり、身体を鍛えることはトレーニングの一側面でしかありません。
トレーニングは負荷と休息が表裏一体となっていなければいけません。
このことから、自分の身体が発しているサインに耳を傾けることが必要不可欠です。私はパワーメーターを用いてATLとCTLに着目し、適切な負荷をかけながら疲労管理を行っています。
特異性の原則
特異性の原則 とは「 トレーニングでかける負荷は、 レースで予想される負荷と同じレベルでなければならない」 というものです。
クリテリウムで勝ちたいのにロングライドやSSTばかりでは結果は出ないでしょうし、ヒルクライムレースに出るのに短時間のインターバルトレーニングばかりしていては後半に失速するのは目に見えています。
自分が到達したい短期的な目標に向けて練習プランを構築していきましょう。
同じレースに出場する仲間と練習するのも実践的なトレーニングにつながると思います。
私の場合はクライマー系の脚質なので出場するレースはヒルクライムやロードレースがメインになります。
そのため練習はFTP付近をメインに刺激しながら、ロードレース前には高強度インターバルを積極的に取り入れるというものになります。
2.トレーニングは年単位の長期戦である
トレーニングにおいて一番大切なことは『楽しく継続』することだと思います。
有名な自転車コーチのジョー・フリールさんはトレーニングを開始した年齢に関わらず、選手が身体的なピークに到達するには約10年かかるということを述べています。
自分のポテンシャルを引き出すのはそれくらい時間がかかります。
競技歴が浅く、レース経験が 3年未満の選手の試合結果には、現時点での能力やポテンシャルが正確に反映されていない場合があることも忘れないでください。
個別性の原則でも述べた通り、能力の向上のスピードには個人差があります。
レースの結果に一喜一憂しすぎないことが必要です。
どれだけ頑張っても能力が十分に向上する前に燃え尽きてしまってはあまりにももったいないと個人的に思います。
長期的な視点を持ちながら、日々のトレーニングで向上していく自分自身の変化を楽しみながらトレーニングしていきましょう。
私もトレーニングを開始して5年目なので、まだまだ能力が伸びることを信じてトレーニングを行っています。
3.僕たちにはみんな才能がある
私が自転車競技の好きなところの1つがどんな人にも才能がある部分が見つかるということです。
FTPが高くない人でも驚異的なスプリント能力があったり、長時間の巡行は苦手でも何回も高強度のアタックを打てるインターバル耐性があったりと100人いれば得意とする領域は100通りです。
その領域がその人のレースでの武器になっていきます。
みんなどこかに才能が隠れているのです。それを見つけて伸ばしてあげるのもトレーニングの楽しい部分だと思いませんか?
いろいろなレースや練習会に参加して自分自身の才能を発掘していきましょう。あなたは必ず表彰台に立つポテンシャルを持っています。
4.適切な情熱をもつ
自転車に魅入られ情熱を傾けることは間違いなく人生を豊かにしてくれます。
自転車に乗っている時間だけではなく、手入れをしたり、機材やトレーニングについての本を読んだり、一生懸命トレーニングすることにも、自転車が好きな方は喜んで時間を費やすでしょう。
このような情熱は素晴らしいものですが、加熱しすぎた情熱は時に強迫神経症的なトレーニングにつながる恐れがあります。
優れた結果を出すためには十分な練習を長期に渡って継続していくことが必要ですが、体力を向上させていくためには休養も必須です。
体調不良や、急な用事、仕事に家事…このようなやむを得ない事情でトレーニングが出来ない日も罪悪感を感じる必要はありません。
トレーニングは長期戦です。直近のレースでよい結果を出すことを「ゴール」ではなく「通過点」と見なしましょう。
おそらく私たちは、強い情熱を持っている人が心に描いているような、完全に満足できるパフォーマンスには決して到達できません。
自転車競技の世界には、そこに至れば初めて脚を休めることができるような、悟りの境地は存在しないのです。
強迫神経症的な トレーニングは、心身ともに悪影響を及ぼすだけです。
過負荷の原則を忘れないでください。
体力の向上、健康の増進、楽 しい時間、すばらしい仲間たち一。サイクリングは、私たちに様々なものをもたらしてくれる、生涯を通じて取り組む価値のあるスポーツです。
このブログはレースで勝つためのトレーニングを中心に発信していきますが、レースで勝つこと、速くなることだけが自転車のすべてではありません。
トレーニングの目的は、弱い自分を打ち負かし、征服すべき`敵、のように痛みつけることではないことを心の隅にとどめておきましょう。
5.目的のないトレーニングはしない
皆さんの時間は有限です。
トッププロの選手でない限り、ワークアウトを行う時間は平日1.2時間+土日というところでしょうか。
この時間の使い方を最大限効率化しましょう。
明確な目的を持った トレーニングを、適切なタイミングで必要最小限行い、継続的な改善を意識することが必要です。
トレーニングを開始して1年ほどの『何も考えなくても乗れば乗るほど速くなる時期』では、心拍計だけでも効率的なトレーニングは可能です。
しかし、以降の効率的なワークアウトをするにはパワーメーターをやはり導入すべきです。
最大のメリットが狙った生理学的作用の強化が可能になる点です。
ただし、ワークアウトが目標となるパワーを出すことだけになってはいけません。
自転車への重心のかけ方、ペダリング、ダンシングフォーム、意識すべき筋肉など取り組むべきことはたくさんあります。
これらを意識している人と出来ていない人では同じパワーでも自転車の推進力が違います。
このことから私はローラーなどでインドアサイクリングも行いますが、基本的に実走でワークアウトをしたい派です。
LSD~ショートインターバルに至るまで、このワークアウトで何を鍛えるのか、レースのどういう場面の能力の底上げを狙うのか目的意識を持ちながら取り組みましょう。
パワーメーターを用いたトレーニング方法はまた記事にしていきます。
競技年数が3年未満ほどで浅い場合は、練習の一環として様々なレースに出場することを強くお勧めします。
自分の得意な領域と課題が明らかになっていくので、日々のワークアウトに反映させていきましょう。
いきあたりばったりではなく、年間で最も重要なレースを2.3個設定し、そこにピークを持っていけるように計画的に体力を向上させていきましょう。
6.トレーニングは24時間続く
トレーニングの目的は体力の向上です。
勘違いしやすいですが、ワークアウトがトレーニングの全てではありません。
ワークアウトを1時間行った後の23時間をどう使うかが、トレーニングの質に大きく影響します。
ワークアウトはトレーニングの主役ではありますが、睡眠・栄養・コンディショニングといった要素も非常に重要です。
クライマーであれば体重管理にも気を配りたいところですが、運動量よりも食事内容に気を付けましょう。
例えば、揚げ物や脂質が多いお菓子(洋菓子など)を採り過ぎないようにするだけでもダイエットはできます。
トレーニングのワークアウト以外の部分にもしっかりと目を向けていきましょう。
7.仲間、ライバルを見つける
どれだけ優れた才能があったとしても、そもそも気づくことが出来かったり、向上させる環境になければ開花することなく埋もれてしまいます。
1人で行うトレーニングは効率的ではありますが、どうしても飽きてしまったり、修行のようにただただ耐えるだけになってしまい、やがて嫌になってしまう可能性も上がります。
何度も言いますがトレーニングは継続が命です。
周囲にチームがあれば、そこに参加して定期的に練習会に参加してください。
自分1人では出来ない集団走行の技術やペーシングが身につきます。
血の気が多いメンバーがいれば競いあうことで自分の限界を超えることもできるでしょう。
自分の得意領域も見つけやすくなります。
あとは、単純に同じ趣味を持つ人とワイワイすることはとても楽しいものです。
一緒に頑張れる仲間がいればあなたのトレーニングは自然と前進していくはずです。
身近にチームがない時は地元のレースに参加して、勇気を出して他の参加者に話しかけてみましょう。
きっと練習仲間が見つかるはずです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
トレーニングを継続していくためのマインドとして何か参考なれば嬉しいです。
トレーニングという過程も楽しみながら、お互いに頑張っていきましょう。
何かに真剣になるって何歳になっても人生を充実させてくれますよね。
それでは、良い日々を。
参考・引用 サイクリスト・トレーニング・バイブル
ジョー・フリール(著)
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